
精神科に来られる方の中には、こうおっしゃる方がいます。
「薬を飲んだら、自分が変わってしまうのではないでしょうか」
「性格まで変えられてしまうような気がして、少し怖いです」
これは、とても自然な不安だと思います。
精神科の薬は、あなたの性格を変えるためのものではありません。
薬は、あくまで対処です。
憂うつな気分が続く。
体が重く、だるい感じがする。
朝起きると、「また一日が始まるのか」と思う。
そういう状態が続くと、人は本来持っている力を発揮することが難しくなります。
仕事には行けている。
大きな問題があるわけでもない。
それでも一日が終わったときに、
「今日もやりきれなかった」
「自分はこの程度なのかもしれない」
そんな感覚が残ることがあります。
このような状態は、決して珍しいものではありません。
薬は、こうしたつらさの強さを少し下げるためのものです。
たとえば、重い荷物を持って歩いているとき、
その荷物を少し軽くしてくれるようなものです。
荷物が少し軽くなると、人は少し余裕が生まれます。
周りを見渡すことができたり、
自分の感じていることを振り返ることができたりします。
精神科の治療では、その余裕の中で
自分のこころの体験を言葉で扱っていくことがとても大切になります。
どうしてこんなに疲れているのだろう。
なぜ同じところで苦しくなるのだろう。
自分は何に傷ついてきたのだろう。
こうしたことは、すぐに答えが出るものではありません。
けれども、診察の中で少しずつ言葉にしていくと、
自分自身のことが少しずつ見えてくることがあります。
もちろん、パーソナリティや生き方そのものが
簡単に変わるわけではありません。
ただ、同じ自分であっても、
自分との付き合い方が少し変わることがあります。
精神科の治療は、薬だけでも、言葉だけでも十分とは言えません。
薬でつらさを少し軽くしながら、
言葉でこころの体験を扱っていく。
その両方があって、人は少しずつ楽になっていくのだと思います。
もしあなたが
「薬に頼っていいのだろうか」と迷っているなら、
その気持ちも含めて、診察の中で一緒に考えていければと思います。




